札幌高等裁判所 昭和25年(う)538号 判決
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(理由)
原審が判示第二事實認定の證據として檢察官の面前に於ける廣島三春の昭和二四年四月十五日附供述調書及び佐伯喜代志の同年五月一日附供述調書を採用していること、右供述調書は兩名の原審公判廷に於ける證言が檢察官の面前に於ける供述と實質的に異なる爲檢察官から刑事訴訟法第三二一條第一項第二號の書面として證據調べの請求をしこれに對し辯護人はその供述は任意性がないとの理由で異議を述べたにも拘らず原審は證據決定をなしその取調べをしたことは辯護人の指摘するとおりである。而して兩名の右供述調書及び網走刑務所の收容所の收容者身分帳簿謄本によると該供述は兩名が被疑者として勾留中檢察官の取調べに對してなされた供述であり佐伯代志は四月二五日から勾留せられたが同日刑事訴訟法第八一條による交通禁止がなされ檢察官は同法第三九條第三項により辯護人との交通に關し四月二七日午後二時五〇分から二〇分間五月二日及び三日何れも午前九時三〇分から三〇分と日時及び時間を指定したことは明らかであるが(廣島については指定した形跡はない)この爲に被疑者の防禦權を不當に制限したとは認められないし、指定した回數が少く時間も二・三〇分宛であつたということから直ちに勾留中の被疑者の供述には任意性がないという結論にもならない。又刑事訴訟法第三九條第三項に「搜査の爲必要」とは被疑者を直接取調べる爲の必要のみを意味するものではないから辯護人との交通に關し指定した時間以外は連續して被疑者を取調べていたということにはならない。從つてこれに反する見解を前提とする所論は採用できない。然るところ檢察官の面前における右供述調書によると同人等は默秘權を告げられた後任意供述し且つ供述を録取した後讀聞けられて誤りのないことを認め署名拇印したものであり供述の内容も全體として原審公判廷に於ける證言と比較してみると自然的で整然として居り何人も首肯出來るし公判廷で證言したのは共に昭和二四年九月七日で檢察官の取調べを受けた時から四ケ月以上經過して居り供述内容は昭和二三年七月の事實であるから時間的にも檢察官の取調を受けた當時の記憶は新鮮であるといえるので是等の情況によると公判廷に於ける證言よりも檢察官の面前における供述は特に信用出來るから右供述調書は證據能力がある。從つて原判決には所論の點につき手續上の違法はない。